千葉市 <五輪>犯罪温床「野良ワイファイ」対策 アプリ使い接続を
2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場周辺で、「野良ワイファイ」と呼ばれる非公式の公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」を悪用した犯罪が多発するのではないかという懸念が高まっている。地元の商工関係者などがセキュリティーを高める取り組みに乗り出しており、訪日外国人に安全にワイファイを使えることをアピールし、誘客につなげたい考えだ。【加藤昌平】
◇千葉・商工業者らが取り組み
「日本のデータ通信量は非常に多く、東京大会ではリオ大会の数倍規模のサイバー攻撃が懸念されています」。今月1日、千葉市中央区の県警本部で開かれたインターネット事業者を対象にした講演会。講師役の県警サイバー犯罪対策課の星野和彦アドバイザーは、前回リオ大会(16年)で野良ワイファイスポットが競技会場周辺に乱立しサイバー犯罪の温床となったことを紹介した上で、そう訴えた。講演会では、別の登壇者から、リオ大会では約4500カ所のワイファイスポットのうち25%が偽装スポットだったことも報告された。
総務省の公衆無線LANセキュリティ分科会が3月にまとめた報告書によると、セキュリティーの低いワイファイを利用してしまうと、攻撃者によって(1)通信内容が傍受される(2)スマートフォンなどの端末に不正アクセスされる(3)利用者になりすまして勝手にサービスが使われる。また、(4)偽装スポットにアクセスしてしまうと通信内容が傍受されたり情報を抜き取られたりする恐れがあるという。星野氏によると、ワイファイスポットは無線ルーターを使えば誰でも簡単に設置でき、ホテルやコンビニなど公式スポットに似せた名前で偽装スポットを作ることも可能だ。
レスリングなどの競技が行われる幕張メッセを抱える千葉市では、千葉商工会議所がNTT東日本の協力を得て市内の飲食店や物産販売所などに公式ワイファイスポット「千葉おもてなしワイファイ」を設置。専用アプリを通じて接続する仕組みでセキュリティーが高く、同市の地域情報サイトを15カ国語で閲覧でき、アプリからワイファイが利用できる場所も検索可能だ。現在13カ所のみだが、今後、増やしていく。同商議所企画広報課の瀬田直也課長は「セキュリティーを高めながらワイファイを多用する訪日外国人に対応できる」と期待する。同社はサーフィンの競技会場がある一宮町でも同様の取り組みができないか調整中という。
専用アプリを制作したNTTBPは13年11月から、千葉おもてなしワイファイと同じ仕組みのワイファイを東京や札幌など全国の自治体でも展開している。同社によると、東京大会によって訪日外国人がさらに増加することを見越している自治体も少なくないという。